講師:渡辺守+山田春子+根岸俊明+ナカムラヨシノーブ
CP+2019 day1-1

2019年CP+のセミナートップを飾るのは、山梨県で富士山を取り続ける写真家渡辺さんチームによるフィルター活用術。風景、花火から動画まで、その魅力を紹介してくれました。

風景編

渡辺 守/ 写真家

富士山麓の山梨県富士河口湖町生まれ。富士を庭石のように感じつつ育つ。都内の有名料亭・ホテル等で日本料理の料理人として修行、地元に戻り蕎麦屋を起業。お客様の職業カメラマンやアマチュアカメラマンに感化され、富士山をメインに撮り始める。日本料理師範としての歳時記等を大切にし、独自の視線から撮影している。Pashadelic SNS 富士山フォトコンテスト #fujidelic2018 最優秀賞など受賞多数。

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初日、トップを飾るのは、この「富士山Tシャツ」でおなじみ、山梨県で富士山を撮り続けている渡辺守さん。渡辺さんのセミナーは4人構成で、渡辺さんが風景写真におけるフィルターの使い方を紹介、花火撮影を山田さん、ポートレイトを根岸さん、そして動画撮影をナカムラさんという分担です。

渡辺さんは作例を見せながら「フィルターを使うと作品がどう変わるのか、触りの部分をお話しようと思います」

高ボッチ高原で撮影したGNDフィルターの作例。空の明るい部分を活かしながら、手前の暗い部分も黒く潰さないためにGNDを使用。フィルターのあり・なしを比較して見せながら、フィルターのグラデーション部分の配置のしかたを説明。

「画面内の明暗差は撮影後のレタッチでもある程度解消はできます。でも、レタッチだとやはりデティールが甘かったり、ノイジーだったりして、ぼやっとした感じになってしまいます。だから撮影の際にできるだけ完成した作品に近いイメージになるように、ぼくはフィルターを使用しているんです」

つづいて、NDフィルター使った長時間露光による作品を紹介。

「この富士山の風景(上の写真)はこうしてみるとつまらないけれど、NDフィルターで長時間露光することで雲の表情が豊かになります。昼間の撮影だと、ND64にND1000を重ねて8分間の露光ができる。そうして撮影した写真を、レタッチしてシャドーとハイライトを落とすことで、作品に仕上げることができるんです」。
(この風景を長時間露光撮影&レタッチした作品写真はこちら・パシャデリックサイトへ) →

花火編

山田春子/ 写真家

大阪府出身。美しい風景とドライブが好きで、写真を撮りはじめる。だんだんと撮影の楽しさに魅了され、写真のプロの世界へ。「輝きの瞬間」をテーマに四季の風景写真と、大好きな花火を中心に撮影している。講師活動では年間約80回、延べ1,000人以上を指導。わかりやすいと定評がある。

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つづいて、花火写真を中心に、スタジオ撮影、クラブツーリズムで写真撮影の講師などマルチに活躍する山田春子さんの登場です。

この作品は、福島県大内宿で撮影した、花火と茅葺屋根の家がある風景。茅葺きの街に花火が上がるということで撮りに行ったそうです。

「建物と花火を一緒に撮るためにGNDフィルターを使用しました。夜空の花火がきれいに表現されつつ、手前の茅葺屋根の明かりや全体像も明瞭に捉えられています」

次にリバースGNDフィルターを使った作例。グラデーション部分の濃さが、中央から上にかけて、通常とは逆に薄くなってゆくフィルターです。

スターマイン撮影の際にありがちな失敗として、下の噴水部分の花火が明るすぎて、上の部分に露出を合わせると白飛びしてしまうケース。上の写真は、フィルターなしで撮ったもの(失敗例)。

そして、上の写真がリバースGNDフィルターを使って、画面下の部分の露光調整を行ったもの。噴水部分の色の出方が全く違うことがわかります。

ポートレイト編

根岸俊明/ 写真家

埼玉県出身。印刷会社のフォトディレクターとしてカタログ等の作成に携わる一方、自身もカメラマンとして撮影を行う。人物撮影はアーティストのプロフ撮影や宣材撮影などを中心に行う。2018年よりTIFA、IPAなど国際的なコンテストに応募、各部門にて入賞。

ポートレイト編担当は、アーティスト写真などを中心に活躍する根岸俊明さん。通常ポートレートではNDフィルターは使わないけれど、今回はポートレイトでのNDフィルターの可能性を探りつつ、風景写真でも参考になるような話をテーマに登壇いただきました。

こちらは街中での撮影です。

「可変NDフィルターを使って、シャッタースピードをコントロールしています。シャッタースピードは1.4秒、被写体は止まって、背景の人は流れる。手持ちで撮れる限界は1秒位なので、三脚を使わずに街中でも取れる設定です。時空のコントロールができるので、表現として面白い写真が撮れました」。

こちらの作品は、スタジオでのNDフィルターを使用した長時間露光撮影。

「周りに残っている光は残像です。シャッタースピードは10ー20秒、人物はストロボを当てて動きを止めています。今回はじめてこうした撮影をしましたけれど、ポートレイトでもフィルターによる表現の可能性を感じることができました」。

今後はNDフィルターで絶景ポートレイトをやってみたい、という根岸さんでした。

動画編

ナカムラヨシノーブ / ビデオグラファー

映画情報媒体を中心に、取材やインタビュー等の撮影を担当中。個人では「写真はエンタメ」をモットーに、浮遊写真やミニチュアポートレートなどに取り組んでいます。目標は「映画秘宝」と「CUT」。

オフィシャルサイト

最後は動画担当のナカムラヨシノーブさん。自己紹介のトリッキーで楽しいムービーを流しつつ自己紹介。静止画ではフィルターは使っていないけれど、動画の撮影時には可変NDフィルターを使用しているそうです。

「動画と静止画の一番違うところは設定なんです。写真はシャッタースピード、露出、ISOで調整ができる。でも、動画ではシャッタースピードはそう変えられないので、露出でしか調整ができないんです。僕は、NDフィルターを明るいときのサングラス、というような使い方をしています」

動画では通常のスピードで撮るときと、スローで撮るときがあり、その際の露出調整に可変NDフィルターを使っているそうです。

「このときは中華街で撮影をしていました。撮っている間にも露出が変わってくるので、ファインダーで確認しながら可変NDのレバーで調整します。レバーが360度回転せずに、最小、最大値で止まるのがいいですね。移動しながら撮るのでこれがあるととても便利です」。