講師:長瀬正太
in CP+2019 day1-3

本サイトでも執筆いただいている長瀬さんの講義、第1回目は、和紙へのプリントをテーマにしたもの。長瀬さんの撮る写真の世界観と和紙独特の風合いで、表現に相乗効果が加わるようです。

長瀬正太/ 写真家
1975年生まれ、群馬県前橋市在住。デジカメ教室『Message』&写団「蒼」主宰、「日本写真協会」会員、「ヒーコ」記事執筆&セミナー講師、「デジタルカメラマガジン」「NikonD810ムック」「尼康鏡界」(Nikon中国公式Webマガジン)他記事寄稿
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シャッタースピードと露出を固定して、可変NDフィルターで明るさを調整

長瀬さんのフィールドは、長時間露光撮影による風景と、草花のマクロ撮影です。本セミナーでは、長時間露光で撮影した写真を、新たな表現へと引き上げる方法としての、阿波和紙へのプリントをテーマにお話しいただきました。

上の写真は、可変NDを使用した作例の紹介です。

「手前と奥をぼかしたいので、露出はF5.6で固定したい。シャッタースピードは、霧を流すので30秒で固定したい。
明け方なので、この状態で可変NDをつければこの設定は可能です。でも、太陽が登りどんどん明るくなってくる。そこを可変NDで調節してゆくんです。NiSiの可変NDフィルターは、1.5段から5段までの間で濃度調整ができます。

可変NDの濃度よりも明るくなったら、ND8を1枚追加して、可変NDを一番明るい方へ戻す。そして、また明るくなるにつれて、可変NDを濃くしてゆく。そうするとまた30分位撮影ができます。ND8と可変NDがあれば、朝の時間帯ならば、自分の考えた露出とシャッタースピードを変えることなく撮影できるんです」

通常、露出かシャッタースピードを確定したら、どちらか一方は適正な光量を確保するために、その環境の明るさなどに依存してしまいます。しかし長瀬さんの場合、露出も、シャッタースピードも作品にとって譲れない設定がある。それを両立させるために、可変NDフィルターが調整役になっている、というお話でした。

長時間露光撮影の世界観と和紙の親和性

長時間露光で撮影した作品をプリントする際に、長瀬さんは和紙をよく使われるそうです。

長瀬さんが使っている和紙は、アワガミファクトリー製の阿波和紙。阿波和紙も、使われる素材によって風合いが異なります。竹から作られた「竹和紙」は、絹のような手触りと、コットン紙よりもふんわりと柔らかな風合い。一方、今回使用した「龍雲」は、素材である楮(コウゾ)の繊維を細長く筋状に残すことにより、より和紙の雰囲気を感じることができる紙質だそうです。

「この鳥居の写真では、繊維の残っている『雲龍』でプリントしています。なぜなら、魂や感情、あるいは神様的なものを表現できると思ったからです。繊維があることで、雲や水面の部分に動線を与えてくれる。しかし、主役の鳥居のところでは、色が濃いので繊維が目立たなくなる。そんな効果を狙ってこの紙を選択しました。

プリントに使う紙をどう選ぶか、選んだ髪の特徴 — 和紙の繊維をどう表現に活用するか。それを考えることでまた表現の幅が広がり、撮る写真の世界も広がってゆくと思います」