講師:金武 武
in CP+2019 day1-5

花火専門の写真家として、四季を通じて39年にも渡り花火を取り続けている金武武さんによる、花火撮影の入門講座です。

金武 武 / 写真家

写真の技術を独学で学び30歳で写真家として独立。打上げ花火を独自の手法で撮り続けている。写真展、イベント、雑誌、メディアでの発表に加え、近年では花火の解説や講演会の依頼、写真教室での指導も行う。1963年神奈川県横浜生まれ。

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花火写真の撮り方

金武さんの講演は、実際の花火大会のムービーを見せながら、撮影現場を実況で描写しているような臨場感のある語り口で、まるで講談のように、テンポよく、楽しい語り口です。

ムービーと共に、撮影シーンが実況されます(花火大会のムービーが流れる)。

「シャッターを押した、
 下から扇形の花火が開いた、
 柳、点滅、
 まだちょっとさみしい、待ってます、
 もう一発こい!
 きた、まださみしい、左に来てほしい、
 きたー、
 これで撮り上がる」

1枚目の写真を見ると、このように花火がいっぺんに上がったように見えますが、実際はそうではなく、それぞれ順番に打ち上げられているそうです。

「まず、下の扇が開いて、次に上の花が開くというように、順番に打ち上げられているの。
結構時間がかかっているんですね。
ゆっくり上がるスターマインの場合は、上、中、下と花火が上がるまで待つの。

シャッターをバルブにして、開けたまま待つ。シャッタースピードが早いと、花火が点になってしまって写らないんだ。
それではつまらないので、僕は全部写したくて、バルブを使って長秒露光しています」

絞り過ぎないために、NDフィルターを使う

金武さんは、現代の花火は年々明るくなってきているといいます。
そこでNDフィルターが必要になる。たしかにF22くらいまで絞れば撮れないことはありませんが、絞り過ぎる事による問題もあります。

「デジタルカメラになってからは、どんなレンズでも、絞りすぎると回析現象が起こります。回析現象というのは小絞りボケとも言って、細い線などがボワっとボケてしまうこと。
SNSにアップするくらいならわからないけれど、プリントすると違いがわかります」

ナイアガラの作例を例に説明。上の写真では、ナイアガラの持ち味である滝の一本一本の線がきちんと描写されています。これが、絞りすぎるとほとんど線が残らない状態になってしまうそうです。NDフィルターで露出をF8にすることで、回析現象を回避しています。

ナイアガラを撮る手順は、こうです。

「火がついたらカメラを向けてピントを合わせる、
 オートフォーカスでピントが合う、
 火の粉が飛んだら試し撮りする、
 シャッタースピードは1.5秒から1.8秒くらい。
 2秒すぎると真っ白になっちゃう。

 均等に火の粉が流れるまで、試し撮りをする。
 均等に火の粉が落ち始めたら本番を撮る。
 ナイアガラは90秒ありますから、その間に何回も撮ることができる。
 ナイアガラの撮影は、打ち上げの手順がわかればそんなに難しくない」

GNDフィルターで水面に反射する花火を撮る

シャッタースピードと露出も適正にコントロールするために使用するのがNDフィルター。一方、金武さんが最近使うことが多いフィルターとして、GNDフィルターを紹介。

GNDフィルターとは、ハーフNDフィルターとも言い、上半分はNDフィルターになっており、真ん中あたりへ向かってグラデーションで徐々に薄くなり、下半分はガラスだけのフィルターです。

「最近、ハードGNDフィルターで撮ることが増えてきた。水面の上で半円形に開く花火、これを水中花火または水上花火といいます。この花火が水に反射するところもきれいに撮りたい。

肉眼で見ると上空の花火も水面の花火も同じようにきれいに見えるけど、写真を撮ってみると水面の花火のほうが暗く感じる。なんでだろうと思っていろいろ試した結果たどり着いたのがこのGNDフィルター。

上の花火だけフィルターをかけて、下は素通しのガラス部分をかける。円形のGNDフィルターもあるけど、真ん中でまっすぐ切れている。この写真、真ん中で水平に切れてはいないですよね。角型フィルターはちょうどいいところまでスライドさせて撮ることができる。それが角型のいいところです」

最後に、花火の楽しみ方についてのメッセージです。

「夏だけじゃなくて、寒いときでも花火は上がっているんです。新潟では雪景色の中で行われる。ロマンチックです。ぜひ冬の花火にもでかけてみてください。群馬では、バレンタインの時期にもやるし、春、桜と花火というのも増えてきた。

花火というのは夏だけではなく、春も、冬もあるんです。ぜひ1年を通して楽しんでください」