01. 花火は永久不変ではない

ISO100, f/4, 15秒, WB 4500k, 三脚・レリーズ使用 /江戸時代に主流だった和火(わび)花火。洋火(ようび)に比べると暗いためNDフィルターを使用せず撮影した。

日本では1732年に隅田川で行われた川施餓鬼(かわせがき)で花火を打ち上げたのがキッカケで「両国川開き花火」が開催されるようになりました。
当時はシンプルな黒色火薬だけで花火が作られていました。黒色火薬は燃焼すると炭が燃えている時の色に近く、暗めの橙色に発色します。線香花火でも使用されている火薬です。
暗めの橙色の花火を「和火」と言います。現在の花火大会でも数は少ないですが打ち上げてくれています。明治に入ると塩素酸カリウム、ストロンチウム、アルミニウムが輸入され花火作りに使用されるようになり紅、青、黄色などの色が付くようになりました。
色がついた花火を「洋火」と呼びます。近年では「パステルカラー」の花火が出現したり、まるでイルミネーションの様に左右に色が移動するように見える「時差式」などが登場しています。また電気点火やパソコンを使用することで音楽と花火を完全にシンクロさせた「ミュージックスターマイン」などが各地の花火大会で見られるようになりました。
花火は永久不変ではありません。花火師さん達の努力により常に進化しているのです。

ISO100, f/6.7, 22.2秒, WB 2940k, 三脚・レリーズ使用, フィルター:ND4 /洋火(ようび)と言われる色鮮やかな花火だ。現在の花火大会では洋火が主流になっている。

02. 花火の撮影にNDフィルターが必要な理由

近年の花火は色鮮やかに、しかも明るいタイプが増えています。ピンク、レモンイエロー、エメラルドグリーン、スカイブルー等、中間色やパステルカラーの花火がたくさん存在しています。
明るい花火を露出オーバーにせず適正露出で撮影するにはISOと絞りの調整だけでは限界があります。ISOは拡張機能で下げる事が出来ますが拡張機能で下げて撮影するとダイナミックレンジが狭くなりより露出オーバーやアンダーの写真が増えてしまいます。また色が薄くなることもあります。
どのカメラでもISOは拡張機能は使用せず1番低い設定にした方が良いと感じています。

<例>

Sony、Nikon、Canon、PENTAX、FUJI/GFX ISO100
OLYMPUS、PANASONIC、FUJI/APS-C ISO200

 

ISOを下げて絞りを調整してもそれでも露出オーバーになってしまう花火が多く存在します。例えば、
銀冠菊花火、点滅花火、ナイアガラ、おもちゃ花火等々明るい花火を露出オーバーにせずに撮るためにはNDフィルターを使用します。
NDフィルターがあれば適正露出で撮れる花火が格段に増えます。花火撮影にはNDフィルターが欠かせないアイテムだと感じています。

露出オーバーになった失敗写真

ISO100, f/8, 10.6秒, WB 電球, 三脚・レリーズ使用, フィルター:ND4 /明るい花火を絞りを微調整せずに撮影すると露出オーバーになってしまう。特に緑の花火は明るい花火なので絞りと露光時間に注意が必要だ。

「回析現象」

明るい花火を絞りを絞って撮影するとクリアーに写らなくなることがあります。原因の一つに「回析現象」の影響が出ていることが考えられます。回析現象はデジタルカメラが普及してきてから話題になってきました。F11、F16、F22と絞りの数字が大きくなれば光の量が減り明るい被写体(花火)でも露出オーバーは避けられます。しかし、それと同時に回析現象が徐々に大きくなるのです。回析現象の影響を少しでも抑えるためにはNDフィルターを装着し絞りを開けて撮ると良いのです。
レンズキット等の普及タイプレンズや高倍率ズームレンズ等は回析現象が目立ちます。高級レンズでは目立たない場合もあります。花火を少しでも高画質で美しく撮るためには三脚と同様にNDフィルターは欠かせないアイテムだと感じます。

<各カメラメーカーのISOとNDフィルターの組み合わせ例>

Sony、Nikon、Canon、PENTAX、FUJI/GFX ISO100 ND4
OLYMPUS、PANASONIC、FUJI/APS-C ISO200 ND8

ISO64, f/13, 15.2秒, WB 3030k, 三脚・レリーズ使用, フィルター:ND4 /2台のカメラを並べて撮影した。1台はNDフィルターを使用しF13で撮影。もう1台はNDフィルターを使用せずF22で撮影した。F22で撮った写真は回析現象の影響でシャープには写っていない。

上の写真の拡大

ISO64, f/13, 15.2秒, WB 3030k, 三脚・レリーズ使用, フィルター:ND4

ISO400, f/22, 11.4秒, WB 3030k, 三脚・レリーズ使用

NDフィルター

風景写真家のために特別に設計された、Nano IR コーティングを施した高品質な光学ガラス製のフィルターは、キズや汚れ・色かぶりのない優れた描写をもたらします。
NDフィルターを使用し絞り込んだ状態で撮影する際、赤外線の影響による色かぶりが問題となることがあります。NiSiのフィルターは、IRコーティングにより赤外線をカットし色かぶりを解消、自然な色合いを再現します。