03. 花火を撮る時の露出、カメラの設定

撮影モードは、マニュアル露出が良い。

露出モードはMにし、シャッタースピードはBULBやTIMEなどの長秒撮影(長時間露光)が行える設定にします。BULBモードが単独で設定されているカメラもあります。

シャッターを開けている時間は花火の開花に合わせます。おおよそ2~20秒で撮ることが多いです。

単発打上花火のシャッターボタンを押すタイミングは、花火が地上から打ち上がる前にシャッターボタンを押し、上空で開花した花火が消えるまで待ちます。消えたのが確認できたらシャッターボタンから指を離して撮り終わります。大きな玉だと60秒以上開けることもあります。

絞りは、ISO100でND4フィルターを装着した場合、F8にします。

ISO200になるカメラの場合は、ND8フィルターを装着しF8かF11にします。開始直後の花火を撮り液晶モニターで写真を確認します。露出オーバーやアンダーになってしまった場合は絞りを調整し再び撮ります。
花火は暗い「和火」から明るい「銀冠菊」まで明暗差の激しい被写体です。1つの絞りで全ての花火は撮れません。適正露出になるように絞りを調整しながら撮影を続けます。

<NDフィルターと絞りの組み合わせの一例>

Nikon、Canon、PENTAX、FUJI/GFX ISO100 ND4 F8
Sony ISO100 ND4 F6.7
OLYMPUS、PANASONIC、FUJI/APS-C ISO200 ND8 F8 or F11

 

ホワイトバランスは、花火の種類によって二つのWBが切り替えられると良いでしょう。

「洋火」と呼ばれる色鮮やかな花火は「電球」または色温度設定2970~3300k、「和火」と呼ばれる錦冠菊や和火花火などは「晴天」かまたは、色温度設定4500~4800K、花火プログラムを見たりアナウンスを聞きながら次に上がる花火の色に合わせてホワイトバランスを変えます。
ユーザー設定U1、U2やFn1、Fn2に登録して置けば切り替えが早くできます。切り換えが難しい人は色温度設定3800kで全ての花火を撮ってみてはいかがでしょうか。
3800kだと色鮮やかな花火も錦冠菊もどちらも妥協した色になってしまいますがAUTOで撮るよりは綺麗に写ります。

ISO100, f/8, 11秒, WB 3200k, 三脚・レリーズ使用, フィルター:ND4 / 色鮮やかな花火を撮るためにWBを3200に設定した。

ISO200, f/13, 9.38秒, WB 4800k, 三脚・レリーズ使用, フィルター:ND8 / 錦冠菊花火の橙色を表現するためにWBを4800に設定した。

ピント合わせは「置きピン撮影」が良いでしょう。

「置きピン撮影」とはAFかMFで前もって何処かのポイントにピントを合わせて置き被写体が来たらシャッターを押すだけにするテクニックです。車やバイク、電車、鳥など素早く動く被写体を撮影するときに使われています。
例えば、スピード200kmで目の前を通過するバイクにAFでピントを合わせるのが難しい場合、通過地点に前もってAFでピントを合わせて置きます。ピントが合ったらMFに切り替えてバイクが来るのを待ちます。バイクが来たらシャッターボタンを押し撮影を行います。前もってピントが合っていますのでAFでピントを合わる時間が短縮できます。

花火の場合もこの方法が良いのです。花火の場合は暗闇で急激に眩しい光が輝きます。特に、花雷、点滅菊など眩しい花火や、単発の牡丹花火などはAFでピントを合わせようとすると「ジーコ、ジーコ」とAFが動き続けいつまでもピントが合わないことがあります。柳花火や冠菊花火の様に光跡が長く伸びる花火やスターマインの様に常に夜空に花火が開花している場合にはAFでもピントは合います。

そこで、花火のピント合わせは、花火大会の最初に上がるスターマインにAFでピントを合わせます。すぐにMFに切り替えれば良いのです。その後のピント合わせは必要ありません。後はシャッターボタンを押すだけです。構図を変えた場合はもう一度AFでピントを合わせMFに切替えます。
高倍率ズームレンズの場合は少しでもズームリングを動かすとピントがズレますのでズーム(構図)を変えるたびにピント合わせを行いましょう。現在のカメラは2000万画素、4000万画素、5000万画素と高画素、高画質になってきました。高画素になるほどピントがシビアになります。フィルム時代のピント合わせ方法ではピンボケになる確率が大きくなってきているのです。

長秒時ノイズリダクション機能はOFFにします。

ONにすると撮影直後にノイズを除去する作業が始まり数秒から数十秒間はシャッターボタンが押せなくなります。
60秒以内の長秒撮影ならばOFFでよいでしょう。低感度で60秒間程度の長秒撮影ではノイズはそれ程気になりません。しかし、60秒間以上シャッターを開けて撮る場合はONにすることをおすすめします。ご自身が所有されているカメラでは何秒間撮影をしたらノイズが出るのか事前に試しておけば花火の撮影時に迷うことが無くなるでしょう。

手振れ補正機能はOFFにします。

三脚を使用した撮影は花火以外でもOFFにします。ONにすると誤作動でかえってブレが発生することがあるのです。AUTOの設定ができるカメラもありますがOFFにした方が安心です。手振れ補正機能はカメラに付いている機種とレンズに付いている機種があります。

階調補正やアクティブD-ライティング等は標準が良いでしょう。

OFFだとダイナミックレンジが狭くなり露出オーバーになってしまうことがあります。「最強」など強く掛け過ぎると花火の周囲に黒い滲みが出ることがあります。

構図

単発ならば縦位置で花火全体を撮れば良いでしょう。ワイドスターマインは横位置で撮るのが良いです。下側は地上を入れます。上側は花火の上部が切れないように構図を作ります。
昇火が無い花火ならば花火を画面の真ん中で大きく撮っても良いでしょう。画面いっぱいに花火を捉える方が迫力ある写真になります。

ISO100、F/11、13秒、WB3500、三脚・レリーズ使用、フィルター:ND4 / 単発花火で昇り入りの写真を縦構図で撮った。

ISO100、F/13、6秒、WB3200、三脚・レリーズ使用、フィルター:ハードGND8/ ワイドスターマインを横の構図で撮った。

ISO200、F/8、12秒、WB3300、三脚・レリーズ使用、フィルター:ND8 / 昇りがない花火をアップで撮った。

04. 必要な機材

カメラ

マニュアル露出が設定でき、ケーブルレリーズやリモートコードが使用できる機種が良いでしょう。

レンズ

撮りたいイメージや花火のサイズ、花火までの撮影距離に合わせ超広角レンズから望遠レンズまで用意しておきましょう。例えば、初めて行った花火大会で、どんなサイズの花火が上がるのか? 筒場(打上場所)までの距離がどの位あるのか分からない場合は先ず標準ズームレンズで撮ってみてはいかがでしょうか?

ケーブルレリーズやリモートコード

花火の撮影は長秒撮影(長時間露光)を行います。カメラのシャッターボタンを指で押すと手の振動が伝わりブレた失敗写真になってしまいます。ブラさないためにはケーブルレリーズやリモートコードを装着しケーブルレリーズのシャッターボタンを押して撮影します。ケーブルの長さが選べるタイプならば短い方が使い易いです。リモコンやスマホでもシャッターを押せますがリモコンやスマホは常に片手で持っていなければならず、カメラや雲台の微調整の時に邪魔になってしまいます。地面やカメラバックに置けば良いのですがそのわずかな時間も惜しく感じます。

三脚と雲台

長秒撮影を行うため三脚は必需品です。立って撮影する場合は自分の背の高さに合った三脚を選びましょう。三本の脚を伸ばし雲台にカメラを乗せた時にカメラが自分の目の高さにくる三脚が自分の背の高さに合った三脚だといえます。高さが足りずに腰を屈めたり顔を下に向けなければカメラの操作が出来ない三脚は自分の背の高さに合っていないといえます。
エレベーターを伸ばせば高さの調整が出来ますがエレベーターを伸ばすとブレの原因になります。5cm程度伸ばすくらいならばブレの影響は少ないですが完全に伸ばすのは止めた方が良いでしょう。特に観覧席など花火の振動を感じる場所ではエレベーターの使用は避けた方が良いです。
三脚を使用するときは常に脚もエレベーターも最大に伸ばして使用するものだと考えている人がいますがそんなことはありません。エレベーターを使用せずしかも脚を短くして使用することもできるのです。脚を短くし地面や椅子に座って使用すれば細い小型三脚でもブレの影響は小さくなります。

三脚の上にある器具を雲台と呼びます。三脚と雲台は別の商品なのです。三脚の大きさには大型、中型、小型、テーブルポット、材質は金属製の丈夫なタイプとカーボン製の軽量タイプがあります。
雲台には主に、パーン棒式の「3ウェイ雲台」と「自由雲台」があります。三脚と雲台は好みのタイプを組み合わせて使用することができます。花火の撮影で使用する雲台は「自由雲台」はオススメできません。自由雲台は縦向きと横向きに変えるとき両手で操作しなければなりません。また水平を合わせるのにホンの少しだけ時間が掛かってしまいます。3ウェイ雲台の方が縦横の操作が片手ででき直ぐに撮影に入れます。