可変NDフィルターで広がる写真表現 vol.3
文・写真:長瀬 正太

3回目のテーマは、NDフィルターの被写体としては王道とも言える「滝」。NDフィルターを知るきっかけや、手に入れてからまず撮ってみるのはみなさん「滝」ではないでしょうか。長瀬さん自身も「真っ先に長秒露光撮影に夢中になりました。目で見るのとはまったく違った表現になる水と光の撮影はいくら撮っていても飽きません」とのこと。そんなスタンダードなテーマに、可変NDフィルターならではの少し違ったアプローチをご紹介します。

慈光 NIKON D800E, f/8.0, 3秒, ISO50, 102mm  NiSi 可変ND VARIO

可変NDフィルターで広がる写真表現 INDEX

水の描写

今回の写真は群馬県吾妻郡長野原町にあります「浅間大滝」にて長秒露光撮影を行いました。水は長秒露光を行うことによってブレ続けて写り、目では見ることのできない絹のような美しい描写になるのが特徴です。通常はだいたい1秒以上のシャッタースピードですと今回の写真のような描写で撮ることができます。

シャッタースピードによる描写の違い

ただ、美しい水の描写といっても個人個人の感じ方に違いがあるかもしれません。私は流れている滝の水しぶきを高速シャッターで止めて豪快に写すよりも、静謐な印象を与えてくれるスローシャッター表現が好きです。

比較画像(右)のような描写になればシャッタースピードは1秒未満でも良いと思います。(ベストなシャッタースピードは滝・川の流れの緩急によります)。

今回の浅間大滝では滝に比べてなだらかな川部分も構図に入ってくるのでシャッタースピードを3秒としました。

長秒露光撮影時の注意点

ここで滝での長秒露光撮影時の注意点をふたつほど。

ひとつはブレ対策です。足元は不安定な岩場ですし滝付近は風も強い事が多いので、レリーズシャッターとミラーアップ撮影も併用して慎重に慎重に撮影しましょう。(私の場合はカメラの上にアナログな水準器をセットして気泡の揺れを見ながらミラーアップ撮影しています)。もちろん撮影時のブレ確認も画面を拡大して針の穴を覗く勢いでチェックします。

もうひとつは風景写真というと普段からPLフィルターも付ける方が多いと思います。滝の撮影の際にPLフィルターを効かせすぎてしまうと水に濡れた岩のシズル感(濡れた質感)も消えてしまい”カラッとドライな黒いだけの岩”となって写ってしまうので注意しましょう。

レンズのズームを利用して見せ方を変える。

さて、今回の撮影でも前回記事の”長瀬流”でご紹介した AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR (もうこのレンズ大好き)という超望遠ズームレンズを使用し、70mmと105mmという2種類の焦点距離で撮影しました。

70mmは「やや広めに奥の滝から手前の岩肌までを緻密に描写」し、105mmは「滝を大きく捉えてダイナミックに表現」することとしました。

この時、まったく同じ三脚位置で同じシャッタースピードのままフィルターも付け替えることなく、可変NDの濃度を変えるだけで二通り撮影を行いました。今回は特に一瞬の光で光芒が出てくれたので「光が出ているうちに早く撮らなくては!」と慌てましたが可変NDのシームレスな手軽さのお蔭でチャンスを逃すことなく撮影することができました。(現地am8:30頃)

撮影条件(1) 70mmを使用して撮影

焦点距離70mmでの撮影時(可変ND1.5段) NIKON D800E, f/16, 3秒,ISO100  70mm  NiSi 可変ND VARIO

まず1枚目は70mmでの撮影ですが、この場合は写真上部の奥の木々から写真下側の岩肌まで全面にピントを合わせたかったのでピントを画面の下から1/3の位置におきf/16まで絞りました。

シャッタースピードを3秒と決めた上でこれ以上絞りを絞ってしまうと解像度が落ちてしまうのですが、可変ND1.5という一番薄い状態で使用してシャッタースピードを調節しました。

撮影条件(2) 105mmを使用して撮影

焦点距離105mmでの撮影時(可変ND3.5段) NIKON D800E, f/8.0, 3秒,  105mm  NiSi 可変ND VARIO

次に105mmでの撮影。この場合は画面全体での奥行きがそれほどないのでピントを滝壺付近に置き、70mm撮影時のf/16をf/8.0に変更して撮影しました。

この時、絞り値の変更で速くなってしまうシャッタースピードを70mm撮影時と同じ3秒のまま撮影したかったので、可変NDの濃度を1.5段から約3.5段という状態に変えて撮影しました。NiSiの可変NDにはツマミも可変具合の目安となる目盛りもついているので、本当に簡単に感覚的に調整できました。

まとめ

さて、今回のまとめですが・・・ひとことで言ってしまえば「長秒露光時、絞り値やレンズの焦点距離を変えた時のシャッタースピードの変化を可変NDで同一にそろえる」となります。

「シャッタースピードはぜったいにこの数値で写したい!」という譲れないこだわりポイントがあり、なおかつ光の状況が変化する(今回の場合は特に絞り値の変更による光の増減)時にこの可変NDの使用方法を覚えておけば、瞬時での対応が可能でとてもスムーズな撮影が楽しめるようになることでしょう。

可変ND VARIO

1.5段〜5段の減光量を無段階に調節可能な可変NDフィルター
可変ND VARIOは、1.5段〜5段の減光量を無段階に調節可能な可変NDフィルターです。ND量はフィルター外周のノブによって容易に調節可能。意図した被写界深度やフレームレートを保持したままで露出を制御することで、より厳密かつクリエイティブな写真/映像表現を可能にします。

長瀬 正太 Shota Nagase

1975年生まれ 群馬県前橋市在住
デジカメ教室『Message』&写団「蒼」主宰
「日本写真協会」会員
ヒーコ」記事執筆&セミナー講師
「デジタルカメラマガジン」「NikonD810ムック」他 記事寄稿
「尼康鏡界」(Nikon中国公式Webマガジン)記事寄稿

展示会など

2013~2016年 「CP+」 阿波和紙ブース
2014年「HKU SPACE」個展(香港)
2014年「Photokina World of imaging」(GERMANY)阿波和紙ブース
2014年「Creative Japanese Artist in Milan 2014」(ITALY)
2014年「Ⅶ International Tashkent Photobiennale」(UZBEKISTAN)
2014年「長瀬正太 和紙写真展 ’心’」(東京新宿)(RICOH IMAGING SQUARE SHINJUKU)
2014年「Onward-Navigating the Japanese Future 2014」(Los Angeles)
2016年「Photokina World of imaging」(GERMANY)阿波和紙ブース
2017 年「静寂 -短歌と写真が織り成す美しい世界- 」 (沼田市)生方記念文庫企画展
2017 年「ぐんまの景観がこんなにも素晴らしい5つの理由」(群馬県)群馬県立自然史博物館企画展

常設展示

  • ヨガスタジオ ポスチャー様(前橋・高崎)
  • 新前橋かしま眼科形成外科クリニック様
  • オキュロフェイシャルクリニック東京様
    (クリニック様は見学の場合は長瀬まで要連絡)

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