文・写真:氏原正智
バイクレースの流し撮りセミナーなど、本サイトでもおなじみ、流し撮りの伝道師、氏原正智氏。今回は、日常の中から探す流し撮りにはじまり、1/10秒、1/3秒の壁に挑む方法について寄稿していただきました。
日常を非日常にする流し撮り
普段の何気ない生活の中にある動きを流し撮りというスタイルで切り取ることで非日常的な写真を生み出すことができます。
※画像をクリックすると拡大します。
バス / @150mm, f/8, 1/4秒, 可変ND VARIO
タクシー/@127mm, f/7.1, 1/15秒, 可変ND VARIO
街ゆく人/@70mm, f/10, 1/5秒, 可変ND VARIO
エレベーター/@70mm, f/13, 1/4秒, 可変ND VARIO
動物(水族館)/@33mm, f/7.1, 1/6秒, CPL
ストリートフォトは撮影条件や被写体の肖像権など若干ハードルが高くなる場合がありますが、公共交通機関は比較的流しやすい被写体ですね。流し撮りは通常の写真撮影とは異なり、普段から練習を必要とする撮影技法ですが、身近にこういった被写体を常に探す努力も怠ってはいけません。
そしていざ晴れ舞台、というときに必殺技として繰り出しましょう。
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運動会/@200mm, f/11, 1/4秒
そう、世界は被写体であふれています。まずはカメラの撮影モードをシャッター速度優先モードに切り替え、1/60→1/30→1/20と少しずつシャッター速度を遅くしつつ被写体と対峙しましょう。難しい、失敗すると感じたときは少し速めのシャッター速度に戻す。成功したらまた遅いシャッター速度に挑戦する。繰り返すことで自然と流し撮り技術は向上し、またその被写体に適切なシャッターも見えてくると思います。
シャッタースピードの限界に挑戦する
1/10秒の壁
シャッター速度1/10秒から更にダイヤルを回し、分母が一桁となる1/8、1/6、1/4・・・(ここでは一桁シャッターと呼びましょう)となるシャッター速度に抵抗感、恐怖感(!?)を持つ方が多いのではないでしょうか。自分の腕では1/30より遅くは撮れないからそんな速度で撮ったことがない、そんなスローシャッターではきっと写真が成り立たないと思っている方は、ぜひ1/10秒よりも遅い一桁シャッターに挑戦してみてください。たとえ1/30で成功しなくとも、1/3では意外と上手くいくこともあるかもしれません。そして一桁シャッターを練習した後に再び1/30を撮ってみると、あれ? こんなに簡単だったっけ? と錯覚して上手く撮れることも多々あります。この行ったり来たりを繰り返すことで、あなたはきっと流し撮りの新たな領域に足を踏み入れていくことになるでしょう。
1/3秒の世界へ
私の息子が高校で自転車競技を始め、大学でも引き続き競技を続けているので、ここ数年は自転車レースを撮影する機会が多くなっています。周回系のレースはシャッターチャンスが多いため流し撮りの素材としておすすめです。同じ構図であっても様々なシャッター速度で撮ることができるため、一桁シャッターへの挑戦もうってつけです。
自転車の場合、競技中の速度であればまずは1/100程度のシャッター速度でホイールが十分にブレる(回転する)ので競技のスピード感を演出することが可能になります。このシャッター速度であれば撮影の難易度も低いので成功率も高くなると思います。
![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2019/08/326f50a98e8860824709608d7599602e.jpg)
CANON EOS 5D mark IV,CANON EF70-200mmF4L IS USM, @70mm, f/4.5, ISO 200, SS 1/100秒, 可変ND VARIO
1/100で抑えの1枚を撮ったなら、そこから一気にダイヤルを回して1/3。
この速度になると背景が大胆にブレて原型を留めていませんが、まるで風景を長秒露光したような時間と色彩がギュッと圧縮された絵画調のアートが映し出されます。スローシャッターで美しく流れる背景を探しロケーションハントしておくことも流し撮りにおける重要な要素の一つです。もちろん主役の被写体がしっかりと捉えられていることが前提となるため、撮影難易度が高く成功率はとても低くなってしまいますが、100枚に1枚いや、1000枚に1枚でも納得できる写真が撮れればと思いながらレンズを振ってみてください。奇跡の1枚が撮れるかもしれません。
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CANON EOS 5D mark IV, CANON EF70-200mmF4L IS USM, @93mm, f/7.1, ISO100, 1/3秒, 可変ND VARIO
昼間の明るい時間帯に流し撮り行う際の注意点
1/30、1/20〜そして一桁シャッターを切るとたいていの場合写真が白飛びしてしまいますので、NDフィルターが必須となります。NiSiの可変ND VARIOを装着しておけば、フィルターを付け替えることなく1.5段〜5段の減光をコントロールできるので、周回数の少ないレースでは1周目を1/200、1/100といった高速シャッターで抑えておき、2周目をスローシャッターに挑戦するという効率的な撮影が可能となります。私は自転車競技に限らす多くのレースでこういった撮り方をするために常時このフィルターを着用しています。
可変ND VARIO
1.5段〜5段の減光量を無段階に調節可能な可変NDフィルター
可変ND VARIOは、1.5段〜5段の減光量を無段階に調節可能な可変NDフィルターです。ND量はフィルター外周のノブによって容易に調節可能。意図した被写界深度やフレームレートを保持したままで露出を制御することで、より厳密かつクリエイティブな写真/映像表現を可能にします。
氏原正智 Masatoshi Ujihara (Uzzy)![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2018/12/50pjwOcG_400x400-300x300.jpg)
フォトグラファー/ITエンジニア
1976年生まれ広島県出身。芝浦工業大学卒業後ITエンジニアとして働く傍らクルマ好きが転じてサーキット、息子の自転車競技などを撮影。日本流し撮り研究所にて流し撮りの撮影技術を学び、主宰する秋ヶ瀬スローシャッターにてオリジナル夜景撮影術を考案。東京カメラ部10選2017に選出。東京カメラ部2018写真展出展。日本流し撮り研究所研究員。秋ヶ瀬スローシャッター主宰。ヒーコ(XICO)にてコラム寄稿中