写真・文:浅井美紀

水滴の中の花や、アリなどミクロの世界をとらえた写真で多くのファンをもつ浅井美紀さん。肉眼では見えない美しさ、幻想的な世界を表現したその作品は、国内外で高い評価を得ています。そんな浅井さんにクローズアップレンズを使っていたき「マクロレンズ+クローズアップレンズ」による活用法をご紹介いただきました。

私が好んで撮る被写体は、3mmに満たないアリや水滴など、極小のものが多いです。
フルサイズ機で撮影すると、その小さな被写体が、主題として物足りなく感じ、トリミングして引き伸ばさなければならないことが多く、悩みの種でした。

このクローズアップレンズを装着することで、より被写体に近づくことができ、構図を作りやすくなりました。心配だった解像度の低下や色のくすみも全くなく、むしろ、光を多く、そして柔らかく取り込めるようになったと感じています。
フルサイズ機でのトリミングが不要になり、カメラの性能を最大限に生かすことができるようになりました。
今では私のマクロ撮影には欠かすことのできないアイテムです。

クローズアップレンズ有無の比較

クローズアップレンズ無 /Sony α7R4 + FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 1/30, f4

クローズアップレンズ有 /Sony α7R4 + FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 1/25, f4

クローズアップレンズを使用すると「しずく」という主題の存在感が大きくなり、しずくの中の玉ボケまで、はっきりと見て取れます。また、同じ絞り値 (F4) ですが、綿毛の質感を、より柔らかく表現できました。

クローズアップレンズ無 /Canon EOS 6D + EF100mm F2.8マクロ IS, 1/60, f9

クローズアップレンズ有 /Canon EOS 6D + EF100mm F2.8マクロ IS, 1/60, f9

クローズアップレンズ無では、背景の花の隙間(黒い部分)が邪魔。また、アリの大きさが写真として小さすぎ、トリミングしなければ存在感がありません。
クローズアップレンズを使うと、アリが構図の中でしっかりと主張しています。また、背景のボケ感が、クローズアップレンズの有無では違っていると思います。

クローズアップレンズ使用作品

Sony α7R4 + FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 1/25, f11

クローズアップレンズを付けることで、解像度の低下が心配でしたが、しずく内の花の質感まで捉えることができました。

Sony α7R4 + FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 1/6, f11

小さめの薔薇を背景にしています。背景に小さな花を選んでしまうと、マクロレンズのみでは、花の周りの余計なものや、空間ができてしまいがちですが、クローズアップレンズを付けると、より被写体に近づくことができ、背景を薔薇一色にまとめることができます。

Sony α7R4 + FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 1/25, f9

Sony α7R4 + FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 1/8, f9

Sony α7R4 + FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 1/250, f3.5

しずくがぶら下がっている茎の両端、葉が枯れていたり絡んでいたりで、実はとても汚いのですが、しずくを小さめに作り、最短距離まで近づくことで、トリミングなしの構図を作ることができます。

Canon EOS 6D + EF100mm F2.8マクロ IS, 1/50, f9

アリの目や体毛なども、しっかりと捉えています。

Canon EOS 6D + EF100mm F2.8マクロ IS, 1/100, f7.1

小さなトレーに水を張り、アリが来るのを待って撮影しますが、トレーの端が画角に入ってしまい、今までは、トリミング必須でした。クローズアップレンズのお陰でそれもなくなり、本当に助かっています。

水滴写真家・浅井美紀

北海道帯広市生まれ。幼い頃から写真鑑賞に興味を持ち、一眼カメラの購入をきっかけに、2012年5月から写真投稿サイト「500px」に自身の写真を投稿。マクロレンズを通して撮影された神秘的な作品は、イギリスのカメラ雑誌等で取り上げられ、その後日本でもさまざまなメディアで紹介される。2015年2月には、初の写真集『幸せのしずくWorld of Water Drops』(扶桑社)を刊行。現在も会社員として働きながら、仕事を終えた後や休日にカメラを手にし、肉眼では見えにくい小さく輝く世界を撮り続けている。

■著作
幸せのしずく World of Water Drops 扶桑社
しずく作品集&撮影テクニック (玄光社MOOK)

■Webサイト

クローズアップレンズ NC キット

APO(アポクロマート)設計を採用。色のにじみを抑え、シャープで解像感の高いマクロ撮影を実現

望遠レンズに取り付けることで最短撮影距離を短くし、マクロ撮影を可能にします。焦点距離70mm 〜 300mm(フルサイズ換算時)のズームレンズ/単焦点レンズで、ワーキングディスタンス(※)22cm〜30cmでの撮影が可能となります。

※ワーキングディスタンス:レンズがピントを合わせられる、レンズ先端部から被写体までの最短距離のこと。