文・写真:RONiN Photo/Scott Grant

カナダのニューファンドランドで生まれ育ち、自然やポートレイト作品を発表しているScott Grant氏による、NiSi 角型ホルダーM75のレビュー。カナダのX-Photographers (富士フイルム認定フォトグラファー)でもある氏が、FUJIFILM XH-1+M75というコンパクトなシステムで撮影を行いました。

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機材を小さく、軽く、そしてコストも抑えたい人にピッタリなシステム

私の角型フィルターに対する記憶といえば、以前に安価なものを購入して、濃度の薄いNDフィルターでさえ色かぶりがひどく、またガラス製ではなかったのですぐにキズがついてしまい、非常に残念なものでした。それ以来、角型フィルターは使わなくなり、正直全く良い印象を持っていませんでした。

NiSiのフィルターシステムとの出会いは、そんな私のフィルターに対する苦い思い出を払拭してくれるものでした。丁寧に梱包されたフィルターと付属品は、それらを取出す段階から品質の違いを感じさせ、M75シリーズが非常に精巧に作られており高品質な製品であることが見て取れます。フィルターはナノコーティングが施された光学ガラス製であり、その縁にまでしっかり加工が施されていました。ホルダー、アダプターリング、CPL、さらに角型フィルター6枚までを一つに収納できるケースも付属しています。ケースの素材がとても良く耐久性もありそうで、フェルト製の裏地が傷や衝撃からフィルターを保護してくれます。またケースにはマジックテープも付いているので、三脚やカメラストラップに取付けて使用することもできます。

同梱のM75フィルターケース

M75ホルダーはフィルター幅75mmの角型フィルター用に設計されていて、フィルタースレッド最大67mmまでのレンズに装着ができます。口径の比較的小さいレンズで撮影することを好み、機材を小さく、軽く、そしてコストも抑えたい人にピッタリなシステムです。私はフジノンXF18-55mmとXF14mm f2.8に着けて使ってみました。どちらもフィルター径58mmと小ぶりで、描写も素晴らしいレンズです。

XF18-55mmへ58mmアダプターリングを介して装着した様子

グローブをしたままでも回転操作ができるCPLフィルター

大口径レンズ用のV5、S5と同様に、M75もCPLと角型フィルターを同時に使える機構になっていて、角型フィルターは2枚まで重ねて装着できます。専用CPLは非常に薄く、所有している他のCPLフィルターがこんなにも厚かったのかと驚かされるほどです。CPLはメインアダプターに取付けることでホルダーシステムの一部となります。画質もよく、回転操作も非常に簡単。メインアダプターには2つのダイヤルがついており、それを操作すると歯車の要領でCPLを回転させることができます。グローブをはめながらでもCPLが操作ができるのは素晴らしい!

CPLの枠に刻まれた歯が操作ダイヤルと噛み合いフィルターが回転します

メインアダプターに組み込まれている操作ダイヤル

角型フィルターを装着したままでも、CPLを回転させることができます

ホルダーはアダプターリングを介してレンズに取り付けます。ホルダーには2つのノブがついていて、下のノブを引っ張りながらホルダーをアダプターリングに引っ掛け、ノブを離すとカチッとホルダーが装着されます。そして上に位置したもう一つのノブ(LOCK)は、ネジを締めることでホルダーを任意の位置で固定することができます。

ホルダーと2つのスクリューノブ

ND8〜32000まで、GNDのグラデーションも4種そろった75mm角型フィルター

M75用の角型フィルターも豊富に種類が揃っていて、NDフィルターはND8、ND64、ND1000、ND32000の4種類。GNDフィルターは、ソフト、ミディアム、ハード、リバースがそれぞれGND4とGND8の2種類、計8種類。さらに光害をカットする「ナチュラルナイト」フィルターもあります。今回の撮影では全てのフィルターを試すことはできませんでしたが、ND32000と、ソフト、ミディアムGNDを主に使って撮影しました。

レーザーで刻印された製品名

手に持つだけで品質の良さが伝わってきます。そして撮影するとそれが確証に変わります。

手前にある雪に覆われた岩は日陰で暗く、画面上部の空は午後の太陽に照らされてとても明るい。GNDフィルターはこんなシチュエーションにぴったりです。

私は日中に長時間露光撮影をするのが好きなのでND32000(減光15段)にはとても興味を惹かれました。普段はND1000(減光10段)を使うのですが、15段分減光するフィルターというのは未知の領域です。ND32000を撮影に投入する前は、どこかに妥協があるだろうと覚悟していましたが、実際に使ってみるとCPLとの重ね使いでもケラれはなく、画面のシャープさも失われていません。フィルターは光学性能にとても優れていて、2枚重ねて着けても画質への影響は感じませんでした。

GNDも同様に優れた品質で、CPLやND32000と重ねても画質を落とすことなく使えます

M75システムで撮影しているときに、写真にゴーストが出てたり、全体的にぼやけた感じだったりすることが何度かありました。すぐに何かおかしいと気づき、よく見てみるとフィルターがホルダーの溝に沿ってまっすぐ挿入されておらず、傾いたまま挿さっていて、それに気づかずに撮影をしていたようです。まっすぐにフィルターを挿し直して撮影したら、すぐに問題は解消されました。

ヒューマンエラーですね(笑。フィルターが真っ直ぐ挿さっているかよく確認しましょう。コントラストやシャープネスが失われたり、フィルター同士の隙間に雪が紛れ込んで写真がボケてしまったりします。

M75システム、CPL+ソフトGND4 Fujifilm X-H1+XF18-55mm

小さなカメラバッグにすべて収まるXH-1+M75

数日前、冬には珍しく朝から晴れていたので、住んでる街を見下ろせる高台へと撮影に出かけました。高台に着くと、もう一人そこで撮影している人がいて、彼のカメラバッグには実にたくさんの機材が詰まっていました。それぞれが撮影を終えたあとにその人とお喋りする中で機材の話になりました。私がその朝に持って出かけたのは、X-H1が1台とフジノンレンズXF14mmとXF18-55mmの2本で、縦横15cm、厚み10cmほどの小さなカメラバッグに入れて持っていきました。M75システムはその内1本のレンズに付けたままカメラバッグの中に、カメラともう一本のレンズは三脚に着けたまま手に持っていました。三脚を除けば機材の重さは1.5kgぐらいだと思います。これほどコンパクトな機材で風景撮影にでかけることができるのは、とても新鮮な体験です。それまではどでかいカメラバッグに機材を目一杯詰め込んで、もう何年もの間撮影に出かけてきたのですから。このコンパクトかつ軽量、そして快適な風景撮影キットの仕上げとして、フジノンXF 55-200mmを買い足そうと本気で考えているところです。
そこにNiSiのM75フィルターシステムをトッピングすれば、ハイキングや旅行に携行するのに理想的な機材の完成です!

M75ホルダー キット

コンパクトカメラ/ミラーレス一眼に最適
39mmから67mmのフィルター径に対応

75mmサイズの角型フィルターを2枚、専用CPLフィルター1枚を搭載。ミラーレス一眼カメラや、ハイエンドコンパクトカメラに対応、カメラ本体のコンパクトさを活かせる小型角型フィルターシステムです。