NDフィルターを用いたクリエイティブフォトのつくり方 vol.3
文・写真:山本高裕
![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2018/09/20180818-_DSC1563.jpg)
NDフィルターを用いたクリエイティブフォトのつくり方 INDEX
昼間の長秒露光は難しい!
冒頭の写真は、以前、日帰りで沼津に行ったときに撮影したものです。久しぶりの海だったのでとりあえず夕日が見たかっただけでしたが、沈みゆく太陽の周りに虹(ハロと呼ぶそうです)が見えて、とても美しく和やかなひとときを楽しむことができました。
このときは、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDという広角レンズに、NiSiのS5ホルダーシステムを装着して撮影しました。14-24mm には専用の角型フィルターホルダーがありますが、このS5はフードに取り付ける箇所の作りが一段としっかりしていて、ちょっとやそっとのことでは外れない安定感があります。
S5システムに対応するレンズの種類も増えているので、もしフード固定型の大型レンズでNDフィルターを使った撮影をしてみたい!という方には、このS5システムがおすすめです
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![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2018/09/APC_0113-2.jpg)
> S5キット
さて、それでは今回の本題に入ります。
カメラとはどんな仕組みでしょう。光が入らないように密閉されていて、写真を撮るぞ!とシャッターを開いたときだけ、1カ所から(つまりレンズから)光を取り込む機械、という感じでしょうか(昔は違いましたが)。
シャッターが開く時間が一瞬だけなのであれば、狙って撮る。さまざまな要素を端折ってしまえば、それだけかもしれません。しかし、露光時間が30秒、1分と長くなるにつれて注意しなければならないことは増えていきます。
今回は、そんなNDフィルターを使った長秒露光での注意点を、まとめて紹介したいと思います。
失敗例1:カメラが動いてしまう
カメラとレンズにはそこそこの重さがあります。フード固定型の広角レンズなどで昼間に長時間露光を行う場合には、レンズの先に「フィルターホルダー」と「NDフィルター」を装着します。そうすると重量はさらに増えてしまいます。そして、レンズ先端側がカメラボディー側より重くなる、フロントヘビーというアンバランスな状態になります。
そのため、カメラの構図を決めてしっかり固定したつもりでも、ちょっとした振動などでカメラが前にバタンとお辞儀をしてしまうことがあります。また、バタンとお辞儀はしないとしても、重みで少しずつカメラの向きがずれていってしまうことがあります。
三脚の雲台のネジはしっかり締めて、長時間の露光にもびくともしないことを確認してから撮影に臨むようにしましょう。
ちなみに下の写真は、撮影中に三脚の雲台が前にバタンと倒れてしまった失敗例です。幸い、フィルターホルダーがカメラから外れて落下しなかったため、フィルターは無事でした。
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また、連載の第1回で「しっかり安定する三脚が必要」と書きましたが、カメラを載せてもグラグラしない三脚が必要です。露光中に風が吹いて三脚が少しでも揺れると、焦点の定まらないブレた写真になってしまいます。
もちろん、撮影前に(フィルター装着前に)しっかりとピントを合わせておくという初歩的な注意も必要です。合わせたつもりで、何かのはずみでフォーカスリングに触れてしまい、焦点がちょっとずれたまま撮影してしまうという失敗もよくあります。
黒いNDフィルターを装着してからではピントは合わせられません。必ずピントをしっかり合わせてからフィルターを装着することを、肝に銘じておきましょう。
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失敗例2:ファインダーから光が漏れてしまう
これは光学ビューファインダー(OVF)に限った話ですが、カメラ内にはファインダーからも光が入り込みます(ミラーレス一眼などの電子ビューファインダー(EVF)の場合は、その心配はありません)。
OVFが付いているカメラで撮影する場合、通常はファインダーをのぞきながら撮影するため(つまり目が遮光してくれるため)何も考える必要はありません。しかし、長時間露光の場合はのぞきながら撮影しませんから、シャッターを開いている間に、どうしてもファインダー側から光が入ってしまいます。特に周囲が明るい日中の撮影では注意が必要です。
ファインダー側の遮光を忘れるとこのような写真が出来上がってしまいます。
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意図して撮ったものであれば、なんとなくアートっぽくていい?などと思うかもしれませんが、意図せずこんな写真になったらがっかりですよね。
上ほどではありませんが、次の写真も同様にファインダー内から入った光が写り込んでしまった例です。橋脚のあたりにピンク色の帯が写ってしまいました。
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この失敗を避けるためには、ファインダー部分をしっかり遮光する必要があります。ファインダーにアイピースシャッター(遮光幕)が付いている機種をお持ちであれば、撮影前にアイピースシャッターを必ず閉じるようにしましょう。付いていない機種の場合は、メンディングデープなどでファインダーを覆い、光が入り込まないようにするといいでしょう。
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最初の撮影で遮光し忘れたとこに気が付き、アイピースシャッターを閉じてから再度撮影。
90sec, f/16, ISO64, 14mm, ND1000 (撮影場所:神奈川県横浜市、大黒ふ頭中央公園)
失敗例3:構図内の強い光でフレアが発生する
角型フィルターを使う撮影ではなくても、レンズを太陽の方角に向けて撮影をすると、ほとんどのレンズでフレアが発生します。同様に、角型フィルターを重ねた場合でも、フィルターで光が反射してフレアが発生します。
下の写真の場合は太陽と対角の左下にフレアが発生しているのが見えます。
![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2018/09/09-20151012.jpg)
NDフィルターを使ってこのような構図を撮ろうとすると、どうしてもフレアが発生します。また、ファインダーからの漏光と違って遮光で防ぐこともできません。
防ぐことはできませんから、撮影は諦める。別の方向を向いて撮る。いさぎよいです。でも、やっぱりいいと思った絵を撮りたいですよね。では、どうしましょう。
ひとつの解決策は、ズームレンズを使っているのであれば、倍率を変えることです。
上の写真は14-24mmのレンズを使い、14mmの広角側を使って撮影しています。そこで倍率を変えて、フレアが画角の外に出るようにすればよいのです。
もう一つの方法は、横位置ではなく縦位置の構図で撮ることです。縦位置にすると横幅が狭くなるので、ズームしたときと同様にフレアは画角の外になります。
私はこの場所を撮ったとき、頭上の橋をいっぱいにフレームに入れたかったため、画角は14mmのまま、縦構図で撮影してフレアに対応しました。
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失敗例4:構図外の強い光でフレアが発生する
NDフィルターを2枚以上、特に「遮光ガスケット」が付いていないNDフィルターを使うときによく起こります。
日中、日が高いうちに撮影すると、重ねたフィルターとフィルターの隙間から、強い光が入り込んでしまい、太陽は構図の外にあるにもかかわらず、フレアが発生してしまうのです。
下の写真は左側、水平線の上にピンク色の線が写っています。右側の空にも薄く写っています。これは、重ねたフィルターの隙間から光が入り込んで写ってしまったものです。
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![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2018/09/gasket-2.jpg)
この程度の映り込みであれば後処理で消すこともできます。とはいえ、写らなければいいに越したことはありません。そんなときは、フィルターの上に布を被せるなどして遮光するようにしましょう。このフレアは太陽が高い位置にあるときのみに注意が必要で、太陽が水平線に近づく夕方などには特に気にする必要はありません。
ちなみに、先ほどお話した「遮光ガスケット」とは、NDフィルターの背面にに貼り付けられている、フィルター間の隙間をふさぐパッキンのことです。正方形のNDフィルターは遮光ガスケットが付いているため、光が入り込むことをそれほど心配する必要はありませんが、ガスケットが付いていない縦長のGNDや用途が異なるPLフィルターなどを使用する場合は、遮光に気を使う必要があります。
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NDフィルター作例紹介
3回連載も今回が最終回となりましたので、最後に作例をいくつか紹介させていただきます。
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横浜の夕景を水面の反射と合わせて。空と水面の滑らかさの両方を収めたかったため、水平に近い構図で。
90sec, f/9, ISO64, 14mm, ND1000 (撮影場所:神奈川県横浜市、象の鼻パーク)
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30秒露光で空と池に映り込む雲を動的に表現。
30sec, f/9, ISO64, 20mm, ND 1000 (撮影場所:東京都中央区、晴海客船ターミナル)
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西日が反射する橋の裏側を強調するため、長秒露光で水面をなめらかに。
60sec, f/11, ISO64, 14mm, ND1000 (撮影場所:東京都中央区、勝どき橋)
![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2018/09/16-20170527.jpg)
![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2018/09/20170506-_DSC8517.jpg)
まとめ
連載の最後に、NDフィルターを使った長秒露光の注意点をまとめておきます。
(1) 構図を決めて三脚をしっかり固定する。
(2) 背面液晶で拡大表示してピントをしっかり合わせる。
(3) フィルター(フィルターホルダー)をしっかりと装着する。
(4) マニュアル設定で露光時間や絞りをセットする。
(5) 必要に応じてカメラの長秒露光時のノイズ低減機能をONにする。
(6) 遮光を怠らない。
(7) レリーズ、リモコンで必要な時間だけシャッターを開ける。
(8) シャッターを開けている間、カメラには触らない。
(9) シャッターを閉じて撮影完了。
NDフィルターを使った撮影は、きっと新しい世界を見せてくれるはずです。今回の連載が皆さんの撮影意欲を高める一助になれば幸いです。
山本高裕 Takahiro Yamamoto
東京生まれ。出版社の編集者と写真の仕事を並行してこなしている。2018年、電子写真雑誌「Tokyo Photography Magazine」を自主発行。写真愛好家グループ「東京夜間写真部」主宰。Tokyo Photo Inspilations Facebook Google Plus
> 詳しいプロフィール
![](https://photographer-dev.nisifilters.jp/wp-content/uploads/2018/06/profile_yamamoto.jpg)