ドクター・リンの写真世界 vol.16

Canon 5D Mark Ⅲ, Canon EF11-24mm f/4L @24mm, f/13, ISO: 200, SS: 241秒, 180mmホルダー, ND1000

冷やかな色調に黄色の小屋が生え、寒暖色のコントラストが美しい

ノルウェーの有名な伝統的漁村、Sakrisøy。可愛い黄色の木の小屋に、背景の雄大な雪山が加わり、息を飲むような美しい光景だ。かつては漁師の住居や漁船の港があったが、今は有名な観光地で撮影の名所となっている。

この作品は太陽が沈んだ後のブルーアワーに撮影した。ブルーアワーは、太陽が昇る前や沈んだ後、太陽の角度が地平線の-4°から-6°に位置する時間帯を指す。余光はまだ消えず、空は寒暖のグラデーションをみせる。時間にするとわずか30~40分ほどで、ブルーアワーとゴールデンアワーの時間帯は別名マジックアワーとも呼ばれ、風景写真家にとって最も貴重な撮影時間である。この作品のように、ブルーアワーの時間は、冷たく静かな雰囲気を撮影するのにふさわしいが、その冷やかな色調に黄色の小屋が生え、寒暖色のコントラストが美しい。

この作品は二分割のシンメトリー構図を用いて上下対象な倒影を写し出している。倒影の完璧なシンメトリーは、平衡と安定の特質を持ち、画面の調和と静けさが強調される。ND1000を用いて露光時間約4分で撮影し、雲や霧をぼかして水面のさざ波を除去し、写真をより簡潔にすることで倒影を鮮明に写すことができた。この観光地では毎日倒影を見られるわけではなく、無風で、水面が特に穏やかな状況下にのみ、その姿を見ることができる。夜の灯りが灯る頃に撮影し、家や街灯りとその倒影が更に彩りを添えている。

漁村やその背景である山々は離れた地点にあり、それらの相対的な位置は撮影にとって重要な要因である。もし左に移動すると、漁村と山脈の位置関係は相対的に離れ、右側に行くと近くなる。何度か往復してみると、ある地点で丁度、漁村と山脈の半分が重なり、全体の構図のバランスがとれた。レタッチ処理でトリミングし、少し写真を横長にすることで、背景の山の雄大な広がりを強調した。