ドクター・リンの写真世界 vol.18

Canon 1DX, Canon 11-24mm @13mm, f/11, ISO:200, SS:1.6秒, 180mmホルダー, GND8

スローシャッターで、泡の軌跡を細長い線として捉える

1枚目の写真はノルウェー・ロフォーテン諸島のSkagsandenビーチで、2枚目は同じロフォーテン諸島のHauklandビーチである。この二つの砂浜のユニークな点は、砂浜から対岸の雄大な山が望めることだ。満潮で大風と大波の時に長時間露光で撮影すると、美しくも独特な浪紋を写真に収めることができる。

波がひいた時、スローシャッターで連続撮影をすると、海へと流れる泡の軌跡を細長い線にすることができる。シャッタースピードをどのように決めるか、これは波のスピードによる。唯一の方法は異なる露光時間を何度か試してみる事だ。一般的には1~3秒で細長い浪紋が出てくる。太陽光が比較的強い時には、ND8またはND64を用いて、露光時間を延ばすことができる。2枚目の撮影時は太陽光が弱く、雲の層に覆われていたが、当時の光線の強さでは十分にシャッタースピードを落とすことができなかったので、ND64を使用し露光時間を1.3秒まで伸ばした。時に、空だけが明る過ぎる状況下では、GNDフィルターを足して、空の明るさを調整したりもする。1枚目では、GND8を使用している。

なぜ連続撮影をするのかというと、波の軌跡は予測できず、いつも見事に美しい線を捉える事に成功するわけではないからだ。ある時には、まだ波が完全に退いていない時にもう一つの波が来てしまい、前の波の軌跡を覆い隠してしまう。またある時は、波の軌跡によって形成された線が期待したように流れずに、次の波を待つ必要がある。予想できないような状況が意外な驚きと喜びをもたらし、とてもユニークな浪紋の絵柄を撮影させてくれるのだ。

対角線を形成する波線は、画面に動きと奥行きを与え、写真にインパクトが出る。また三分割法を利用して、海面が画面の2/3を占めるように配置し、空を1/3にすることで、波の方により多くの空間を持たせた。1/3の線には孤立した峰を置き、アクセントとした。1枚目は黄昏のブルーアワーに撮影したため、寒色を基調とした写真は抑圧と静けさの印象を与える。2枚めは早朝に撮影したため、明るめの色調が活気を満ちた感覚を写真に与えている。また、ダイナミックな波と、静止する山が、動と静のコントラストを形成し、これらの要素で写真の深みがさらに増している。

Canon 5D Ⅲ, Canon 11-24mm @24mm, f/9, ISO: 320, SS: 1.3秒, 180mmホルダー, ND64