金武武の花火月誌 1月

「冬」「東京」ときて、なかなか「花火」は思い浮かびませんが、毎年12月に、お台場で毎週開催されている花火大会があるのです。都市、橋梁、花火、澄んだ空気、着込んだ人々と、都心の冬の花火はとてもフォトジェニックです。

牡丹花火を扇状に打ち上げて華やかさを演出している。/ ISO100、F6.7、36秒、NiSi ND4

花火とレインボーブリッジを適正露出で撮る

「イルミネーションと花火」や「ライトアップされた建物と花火」など冬は花火イベントが各地で開催されています。
東京お台場では12月の毎週土曜日19時から10分間だけ花火が打ち上がります。
背景のレインボーブリッジは色鮮やかにライトアップされ花火をより一層引立てています。
花火を打ち上げている時間は10分間と短時間ですが毎週土曜日に開催されていますのでもし1週目に撮影を失敗しても翌週も、そのまた翌週もトライできるのです。
2018年の12月は土曜日が5週ありましたので5回も撮影のチャンスがありました。
ひと月の内に何度も撮影出来るのはお台場レインボー花火の魅力の1つだと感じています。

レインボーブリッジと花火は肉眼ではどちらも美しく輝いて見えます。
しかし、一般的な花火の撮影方法で撮るとレインボーブリッジが暗く写ります。
ライトアップされたレインボーブリッジは花火ほどの光量がないのです。
ライトアップされた建物と花火の双方とも綺麗に撮るには露出の設定にひと工夫します。

撮り方には様々な方法がありますがスタンダードな撮り方を一つ紹介します。

まず、一般的な花火を撮る時と同じようにNDフィルターを装着しISO感度と絞りを選びます。
次に何秒間露光(シャッターを開けていたら)したらレインボーブリッジが適正露出で写るのかを試し撮りします。
花火が始まる前に何度も何度も試し撮りを行いレインボーブリッジが見た目に近い明るさで写るシャッタースピードを探すのです。
花火が始まったらそのシャッタースピードで撮り続けます。
掲載した写真の露出は、ND4フィルターを装着し、ISO100、F6.7に設定。
シャッターは36秒間露光したため花火とレインボーブリッジの双方を適正露出で撮ることが出来ました。
露出の設定はカメラとレンズと花火のバランスによって半絞りから1絞り程度違いがあります。掲載してる撮影データは参考程度にご覧ください。

10分間という、限られた時間の中での巧みな演出

お台場レインボー花火を担当されている煙火業者は丸玉屋小勝煙火店さんです。
煙火業界では老舗中の老舗です。
打上場所は海上に浮かべた台船1隻、最大の打ち上げサイスは5号玉。
10分間の構成はスターマインと単発打上を交互に打ち上げてくれます。
台船一隻からの打上ですが時には扇型に打ち上げる手法もあり見応えある演出をされています。
型物花火では定番のハートやスマイル、そしてクリスマスにちなんだサンタクロースの顔、立体のクリスマスツリーなど珍しい花火も上がります。サンタの顔が正面で見えたお客様達からは「うぁー」と歓声が聞こえてきます。
限られた条件の中でアイデアとテクニックを駆使しお客様を楽しませようとしている花火師さん達の姿は素晴らしいと感じています。

花火開始前に試し撮りを行いレインボーブリッジが明るく写るシャッタースピードを探っている。

花火の夜はお台場周辺に数千人~1万人程度のお客様が集まります。台場駅近くのプロムナードやアクアシティー周辺は混雑します。三脚が何本も並んでいる場所もあります。しかし、お台場海浜公園に行けば混雑はありません。ゆったりと花火を楽しむことが出来ます。

花火の撮影では必ず三脚を使用しますが、私は混雑する会場の最前列で撮影する場合、後ろのお客様の視界を遮らないように三脚を低くして座って撮影する様に心掛けています。美しい花火と夜景を皆さんと一緒に楽しめればと考えています。

NiSi NDフィルター


風景写真家のために特別に設計された、Nano IR コーティングを施された高品質な光学ガラス製のフィルターは、キズや汚れ・色かぶりのない優れた描写をもたらします。
NDフィルターを使用し絞り込んだ状態で撮影する時、赤外線の影響による色かぶりが問題となることがあります。NiSiのフィルターは、IRコーティングにより赤外線をカットし色かぶりを解消、自然な色合いを再現します。

金武 武 Takeshi Kanetake

写真の技術を独学で学び30歳で写真家として独立。打上げ花火を独自の手法で撮り続けている。写真展、イベント、雑誌、メディアでの発表に加え、近年では花火の解説や講演会の依頼、写真教室での指導も行う。1963年神奈川県横浜生まれ。

●著作等

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