金武武の花火月誌 2月

オートバイのグランプリレースで知られる「ツインリンクもてぎ」は、栃木県にあるサーキットで、キャンプ場なども併設された総合施設でもあります。このサーキットで、今年も恒例の冬の花火大会が開催されました。花火はサーキットにも似合うようです。

噴出花火の露出オーバーを抑えるためHard GND8のND部分を下向きにして撮影しています。OLYMPUS OM-D E-M1Mark2 ISO200、BULB:25秒、F16、Hard GND8 レリーズ 三脚使用

1月2日、年始の花火大会

栃木県にあるツインリンクもてぎでは夏と冬に花火が行われています。
ご存じの様にツインリンクもてぎは自動車やオートバイのレースが行われるサーキット場です。サーキット場で花火が開催されるのはなかなか面白い試みだと思います。
ツインリンクもてぎ以外では富士スピードウェイや鈴鹿サーキットでも開催されています。

サーキット場に花火が設置されます

冬の花火は1月2日に開催されました。
観覧席は階段状になっているため見晴らしが良くコース場に設置してある打上筒を見ることが出来ます。
噴出花火の筒が観覧席の直ぐ目の前に設置してあるのでトラや扇打上などの噴出花火が至近距離で打ち上がることが想像できます。
ここで使用されている花火の最大打上サイズは尺玉です。大きな花火になるほど遠くに設置し安全な距離が確保されている事が分かります。
演出は全編音楽花火で、テンポの良い曲と共に華やかなスターマインを打ち上げたり、スローな曲調に合せ一発ずつ丁寧に打ち上げる単発打上もあります。
観覧のみでも写真撮影でも楽しめる花火大会だと思います。

イメージ通りの写真を撮るためには、シャッターのタイミングを身体で覚える

何処の花火大会でも一緒なのですが低空の噴出花火と上空の割物花火が一緒に打ち上がっている時に写真を撮ると噴出花火が露出オーバーになってしまいます。
噴出花火は割物花火に比べるととても明るい為露出オーバーになりやすいのです。
ツインリンクもてぎでは噴出花火が観覧席(撮影場所)に近いためより一層露出オーバーになってしまいます。

そこで、私はGND8ハードタイプを使用し出来るだけ双方とも適正露出で写るようにしています。GND8ハードタイプの装着はNDの部分を下向きにし低空の噴出花火の明るさを抑える様にします。上空の花火にはGND8ハードタイプの透明部分が掛かるようにします。
しかし、GND8ハードタイプを装着したからといって安心は出来ません。噴出花火が次々打ち上がる激しいスターマインの時には露出オーバーになってしまいます。この場合は沢山の花火が重なり過ぎない様にシャッターを開けている時間(露光時間)で調整しています。

Hard GND8のND部分を下向きに装着した様子

「いつシャッターボタンを押したら良いのか? いつ放したら良いのか分からない」という声をよく聞きます。
現在、デジタルカメラは進化し様々な調整をカメラがやってくれますが、花火の撮影ではカメラのオート機能に頼る事が出来ません。
露出もピントも構図もシャッターボタンを押すタイミングも自分で判断しなければなりません。イメージ通りの写真を撮るためには何度も花火の撮影を体験しシャッターのタイミングを身体で覚える事が必要だと感じています。

シャッターのタイミングでアドバイスをするとしたら、沢山の花火を入れようとするとあっという間に露出オーバーになってしまいます。欲張らずに上空の花火と低空の花火が一回ずつ開花したら撮り終わるようにしてみてください。
花火の撮影は諦めず続けることが重要だと感じています。
いつの日かイメージ通りに撮れた時の達成感や解放感は他の写真とは違った感動があります。

近年は冬に開催される花火が増えてきています。冬の花火は混雑が少ないため夕方行っても撮影場所が確保できる事が多いです。観覧だけならば花火開始直前に行っても余裕で場所が確保できるでしょう。
冬は湿気が少ないため煙の発生が少なめです。そのおかげで花火の色が綺麗に撮れます。
冬の花火は感動が一杯なんです。

NiSi GNDフィルター

風景写真家のために特別に設計された、Nano IR コーティングが施された高品質な光学ガラス製のフィルターは、キズや汚れ・色かぶりのない優れた描写をもたらします。
構図に合わせてフィルターをかける位置を調整することができるため、表現の幅をより一層たかめてくれます。

金武 武 Takeshi Kanetake

写真の技術を独学で学び30歳で写真家として独立。打上げ花火を独自の手法で撮り続けている。写真展、イベント、雑誌、メディアでの発表に加え、近年では花火の解説や講演会の依頼、写真教室での指導も行う。1963年神奈川県横浜生まれ。

●著作等

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