秋田県大曲の花火大会
金武武の花火月誌 6月

おそらく日本で1、2を争う有名な花火大会といえば、夏の大曲花火大会でしょう。そんな大曲、実は毎月花火大会が開かれているということです。カメラマン席も用意された春の大曲で、GNDフィルターを使った撮影法をご紹介します。

夏だけじゃない、通年開かれる大曲の花火大会

花火の話しが始まると「大曲」という地名が出てくることが良くあります。「大曲=花火」という印象を持っている人は多くいます。「花火で街を活性化したい」と考えている秋田県大仙市大曲にとってはブランドイメージが上手くいっていると言えるでしょう。

夏の大曲は毎年8月最終土曜日に開催されます。2019年は8月31日土曜日、打上数1万8千発、最大打上サイズ尺玉、集客人数70~80万人。間違いなく大人気の大規模花火大会です。
実は大曲の夏の花火は全国花火競技大会と言います。一般的な花火大会は地元の煙火業者さんが花火を打ち上げてくれます。しかし、全国花火競技大会大曲の花火は全国各地から30名の花火師さん達が集まり自信作の花火を順番に打ち上げます。競技大会ですから審査員がいてそれぞれの花火に点数を付け順位を決めます。内閣総理大臣賞を始め経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、中小企業庁長官賞、観光庁長官賞など数々の賞が用意されているのです。
大曲で賞を頂く事を夢見て日々努力されている職人さん達が沢山いらっしゃるのです。

夏の大曲の花火は質の良い花火がたくさん上がる素晴らしい花火大会なのですが、花火を見に行った人達と話しをすると花火の話よりも混雑と渋滞の話しで盛り上がる事がよくあります。大人気の大会ですから混雑と渋滞は仕方ないことなのですが悪い印象が残ってしまうのは残念でなりません。
実は大曲周辺では夏の花火大会以外にも毎月のように花火が上がっているのです。その中でもオススメしたいのは「大曲の花火:春の章」です。打上数:8000発、打上最大サイズ:尺玉、今年(2019年)の打上業者は、地元業者4社、国内業者1社、海外業者1社。花火の内容は単発打上花火、スターマイン、ミュージックワイドスターマインと豪華で華やかで見応え充分なんです。毎年5月に開催されますので昼間は丁度良い暖かさで夜は防寒が必要になります。そしてさらにオススメなのが混雑が殆ど無いことです。
夏の花火も良いのですが春の章にも注目して欲しいと思います。

日没後のカメラマン席の様子。ガラガラです。

有料イス席のチケットを持っていればカメラマン席(三脚使用可能エリア)に入れます。
開場時間と同時に走り出し場所を確保するカメラマンさん達が居ますが一通りカメラマンさんが入った後で入場してもまだまだ撮影場所はあります。
私は混雑が苦手なので後から入りますが撮影場所が無くて困ったことはありません。

花火も観客席も撮るために、GNDフィルター

NDが上空の花火だけに掛かるようにしています。

「観覧席と花火」を撮りたいと考え単発打上花火で試みました。
しかし、花火はとても明るい被写体です。逆に観覧席には照明等は当たっていませんので花火に比べたら暗いのです。一般的な撮り方で撮影すると花火は適正露出で撮れても観覧席は暗く写ってしまいます。観覧席が明るく写るようにISO、絞り、シャッタースピードを調整をすると今度は花火が露出オーバーになってしまいます。
そこで、角形フィルター:ハードGND8を使用して花火と観覧席の明暗差を近づけようと考えました。上空の花火にNDが掛かるようにフィルターの位置を調整し観覧席にはNDを掛けないようにしたのです。
ハードGND8を使用したおかげでイメージ通りの写真が撮れました。

ハードGND8を使用し花火と観覧席の双方を適正露出で撮りました。ISO100, F6.7, BULB(25秒間), ハードGND8, レリーズ, 三脚使用

上下花火の輝度差解消のために、GNDフィルター

スターマインでは低空の噴出花火と上空の割物花火が組み合わされた演出で打ち上がります。エンディングに近づいていくと噴出花火も割物花火も休みなく激しく打ち上がります。
一般的な撮り方で撮影すると大抵は噴出花火が露出オーバーになってしまうのです。
そこで角形フィルター:ハードGND8を使用し低空の噴出花火にNDが掛かるように調整しました。ハードGND8を使用したおかげで低空の噴出花火も上空の割物花火も適正露出で撮れました。

激しいスターマインでは低空の噴出花火だけにNDを掛けています。ISO100, F8, BULB(13秒間), ハードGND8, レリーズ, 三脚使用

NDが低空の噴出花火だけに掛かるようにしています。

角形ハーフNDフィルターの良い点はフィルターをスライドさせ自分の好みの位置で止めることが出来ることです。またフォルダを回転させ上下逆にして使用する事も簡単に行なえます。私の花火の撮影ではハードGND8が欠かせないアイテムとなりました。

花火終了後には花火の余韻を味わいながらゆっくりと機材を片付けます。気が付くと周囲には人がいなくなっています。春の花火は帰りも混雑が無く快適なのです。
大曲では秋にも花火があります。2019年は10月12日土曜日です。
秋の章も春の章と同様にかなりオススメです。

GND

風景写真家のために特別に設計された、Nano IR コーティングが施された高品質な光学ガラス製のフィルターは、キズや汚れ・色かぶりのない優れた描写をもたらします。
構図に合わせてフィルターをかける位置を調整することができるため、表現の幅をより一層たかめてくれます。

金武 武 Takeshi Kanetake

写真の技術を独学で学び30歳で写真家として独立。打上げ花火を独自の手法で撮り続けている。写真展、イベント、雑誌、メディアでの発表に加え、近年では花火の解説や講演会の依頼、写真教室での指導も行う。1963年神奈川県横浜生まれ。

●著作等

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