ビームスペクタクル in ハーバー
金武武の花火月誌 7月

花火以外の要素も組み合わされた、総合エンターテインメントとして楽しめる横浜開港祭「ビームスペクタクル in ハーバー」。ただし写真撮影の観点からは、花火、レーザー、火炎放射など、すべての要素を撮影するのは金武さんをもってしても「至難の業」のようです。

サーチライトが収まりレーザー光線だけが輝く時間に露光時間を長くかけてレーザーの光を強調しその後の花火を一発だけ撮りました。NDは花火だけに掛けています。
E-M1MarkⅡ ISO200, F16, 163秒間, ハードGND8,レリーズ 三脚使用

子供から大人まで1日中楽しめる横浜開港祭

神奈川県の横浜市は6月2日が開港の記念日です。みなとみらい臨港パークでは6月1日と6月2日の二日間に渡り開港祭が行われています。会場は横浜みなとみらいにある臨港パークです。2019年は開港160周年記念で開港祭は38年目でした。

横浜みなとみらいにある臨港パークが会場になっています。

舞台ではダンスや歌、公園内ではゲームや体験イベント、海上では船を使ったイベントなど大人から子供まで一日中楽しめる内容盛りだくさんのお祭りです。フィナーレを飾るのが「ビームスペクタクルinハーバー」。音楽、サーチライトなどの舞台照明、火炎放射、レーザー光線、そして花火が組み合わされた総合エンターテイメントです。けして花火大会では無いのです。
フィナーレの時間が近づくと今まで賑やかだった会場は照明が落とされいつの間にかスモークに包まれています。
サーチライトが垂直に夜空を照らしスタートします。テンポの良い曲や誰でも知っている曲と共に舞台照明とレーザー光線と花火が組み合わされた豪華なショーが繰り広げられます。どのシーンを見てもワクワクドキドキで感動の連続です。
この世界観は横浜開港祭でなければ味わえないオンリーワンだと感じます。
最近は各地で「プロジェクションマッピングと花火」や「パフォーマンスと花火」など従来とは違った演出で楽しませてくれる花火ショーが見られるようになってきました。横浜開港祭はその先駆けといえるでしょう。
「ビームスペクタクルinハーバー」が現在の形になるまでにはスタッフの皆さんの並々ならぬ努力の積み重ねがあったのだと推測致します。

レーザー、舞台照明、花火… 演出毎の明暗差をGNDで補正する

何度見ても感動する大好きなイベントですが煌びやかで豪華な演出は写真には難しい要素がたくさんあります。ここの花火はどこの花火イベントよりも撮影が難しいのです。
例えば、肉眼では舞台照明も花火も綺麗に見えますが写真に撮ると舞台照明は真っ白な露出オーバーになってしまいます。舞台照明が物凄く明るいのです。
そこで私は角形フィルター:ハードGND8を使用します。舞台照明の明るさを抑えるためにハードGND8のND部分を下側の舞台照明に掛かるようにして撮影します。
また、レーザー光線は暗いため花火と一緒に撮影するとレーザー光線は露出アンダーになります。この場合はハードGND8のND部分を上空の花火に掛け下側のレーザー光線にはNDを掛けないようにして明暗差を抑えています。NiSiの角形フィルターフォルダはスムースに回転しますので照明の種類、明るさ、色などが変わるたびにフィルターの向きを変えながら撮影を行います。また絞りを微調整し可能な限り適正露出で写すように努力しています。
とはいえ全ての演出を適正露出で撮るのは無理です。毎年撮影に行きますが2~3枚ほど綺麗に撮れていれば大成功だと考えています。
「ビームスペクタクルinハーバー」の撮影は瞬時に判断しながらあらゆるテクニックを駆使して撮影を行います。自分の腕が鈍っていないか? または感覚が衰えていないかを確かめる腕試しの撮影なのです。

エンディングの銀冠菊花火のスターマイン。銀冠菊がたくさん重なり過ぎて露出オーバーにならないように気を付けています。NDは舞台照明に掛けています。
α7MarkⅢ ISO100, F13, 7秒間 ハードGND8, レリーズ 三脚使用

GND

風景写真家のために特別に設計された、Nano IR コーティングが施された高品質な光学ガラス製のフィルターは、キズや汚れ・色かぶりのない優れた描写をもたらします。
構図に合わせてフィルターをかける位置を調整することができるため、表現の幅をより一層たかめてくれます。

金武 武 Takeshi Kanetake

写真の技術を独学で学び30歳で写真家として独立。打上げ花火を独自の手法で撮り続けている。写真展、イベント、雑誌、メディアでの発表に加え、近年では花火の解説や講演会の依頼、写真教室での指導も行う。1963年神奈川県横浜生まれ。

●著作等

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