三重県熊野市
金武武の花火月誌 9月

例年であれば船上から観覧、撮影をしていたという「熊野大花火大会」。今年は台風の影響で延期され、陸上からの撮影となりました。10年以上通い続ける金武さんが選んだ今年の1枚は、大会最後のプログラム「彩色千輪菊一斉打ち」です。

三重県熊野市で毎年8月17日に開催されている「熊野大花火大会」には10年以上通い続けています。しかし観覧方法が少し変わっています。「客船ぱしふぃっくびいなす」の花火クルーズに講師として乗船し大勢のお客様達と共に船上から観覧するのです。
船内では講演会、花火写真教室、写真展を行い花火の時間にはスポーツデッキ(甲板)で花火の生解説を行っています。「客船ぱしふぃっくびいなす熊野大花火クルーズ」はたいへん人気があり毎年満席になるクルーズなのです。

客船ぱしふぃっくびいなすのスポーツデッキ(甲板)の様子

船上では花火開始間際になるとお客様が集まってきます。

じつは今年(2019年)の熊野大花火大会は台風の影響を受け開催日が8月26日に延期になりました。そのため「客船ぱしふぃっくびいなす」は行先を変え愛知県知多半島で開催された「内海メ~テレ花火」に行くことになりました。
延期になった「熊野大花火大会」には車で行く事にしました。10年以上通っているとは言え陸上で観覧&撮影するのは今回で2回目なのです。幸か不幸か延期になったお陰で貴重な体験になりました。

延期になったせいか海岸は空いていました。

熊野大花火大会は打上数10,000発、使用されている花火の最大サイズは三尺玉。
見どころは沢山あります。例えば、岩場に置いた花火に直接点火する「鬼ヶ城大自爆(大仕掛け)」や世界最大級の水上花火「三尺玉海上自爆」、台船と陸地で同時に打ち上げるワイドスターマイン等々どのプログラムも大迫力の内容です。
桟敷席の海岸で観覧すると夜空一杯に花火が開き超広角レンズを持っていても全ての花火を画面に収めるのは難しいと感じました。

今回のコラムには「彩色千輪菊花火一斉打ち」の写真を掲載いたします。
「千輪菊」とは大きな花火の中に小さな花火が沢山詰め込まれている花火です。上空でドンっと音がした後に小さな花火がバラバラっと開花します。
「彩色」とは赤、青、緑、紫等々色鮮やかな色を組み合わせた配色を「彩色」と呼びます。
「千輪菊」は上空でいきなり開花しますので千輪菊の特徴を理解していないとシャッターのタイミングを合わせるのは大変です。
毎年観覧しているおかげで次にどんな花火が来るのか予測が出来るようになりました。「そろそろ来るかな」と予測しながらレリーズのシャッターボタンに指を掛けその時を待ちます。
今年は最後のプログラム「巌頭の轟き」のスタート時に「彩色千輪菊一斉打ち」が打ち上がりました。打上音を聞き「これだ!」と判断し上昇して行く玉筋を見ます。
夜空に開花音がドンっと響く「ここだ!」感じた瞬間にシャッターボタンを押し撮影したのです。

「彩色千輪菊一斉打」FUJIFILM X-T3、10-24㎜F4(10㎜で撮影)、ISO160、BULB(11秒)、絞りF7.1、三脚、レリーズ、ND4

ND

風景写真家のために特別に設計された、Nano IR コーティングを施された高品質な光学ガラス製のフィルターは、キズや汚れ・色かぶりのない優れた描写をもたらします。
NDフィルターを使用し絞り込んだ状態で撮影する時、赤外線の影響による色かぶりが問題となることがあります。NiSiのフィルターは、IRコーティングにより赤外線をカットし色かぶりを解消、自然な色合いを再現します。

金武 武 Takeshi Kanetake

写真の技術を独学で学び30歳で写真家として独立。打上げ花火を独自の手法で撮り続けている。写真展、イベント、雑誌、メディアでの発表に加え、近年では花火の解説や講演会の依頼、写真教室での指導も行う。1963年神奈川県横浜生まれ。

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